クマごろうの独り言

三十路を越えたクマのオス。フットボール中心に気になること

【W杯番外編】フランスの優勝で幕を閉じたロシアW杯総括

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ついに終わりを告げたW杯。開催国ロシアの躍進や強豪国の相次ぐ敗退など、色々なトピックスに彩られた大会もフランス代表がクロアチア代表を破り2度目の優勝となりました。様々な面から次代のターニングポイントとなりそうなこの大会を個人的に振り返ります。

 

タレントを活かしたフランスの栄冠

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まずは優勝したフランス代表について。開催前からタレント力ではポテンシャルの高いチームだった訳ですが、組織としても非常にまとまってましたね。タレント力があってもそれがチーム力に反映されにくい代表っていくつか思いつきますが、その内の一つであるフランス(常に移民問題に揺れる国内)がこれだけ戦えたのはやはりディディエ・デシャン監督によるところが大きいのかなと思います。選手時代の印象も強いデシャンですが、イメージ通りの厳格なチームであり、例えば雑音が聞こえそうだったベンゼマの事件でチームから即外す判断など、決断力に優れた指揮官でしたね。

 

またチームそのものも手堅いチームでした。正直、面白みには欠け退屈なフットボールと言ってしまえばそれまでですが、自前の選手の特性をよく把握したゲームプランは徹底されていたと思います。決勝トーナメントに入ってからのフランスの試合は全て見ましたが、どの試合でもボールは相手に明け渡すものの中央は堅く閉じられており、ボールを奪取してはムバッペを走らせるというシンプルな作りです。そこにグリーズマンが少しばかりのアイデアを加えれば労せずゴールを挙げていました。年齢だけで言えば若い選手の多いフランスでしたが、既にクラブシーンで大舞台を経験している選手達は老獪だったと思いますよ。

 

フランスはよりアスリート的で非常に効率性を高めたチームで頂点に立ちました。

 

世代交代と時代の流れは

 

フランスの優勝と若きスター、ムバッペの登場は次の時代を示唆したのでしょうか。まずは大会をチームレベルで見た場合、優勝したフランスをはじめサプライズを提供した国は手堅い守備をメインとしていたのは間違いないでしょう。それは例えばリバプールのような先鋭的な守備ではなく、自陣をしっかり人数で堅めるオーソドックスなものでした。それが本当に強かったのは密度が非常に高かったからでしょう。アスリートとしての能力の向上が著しい現代において、自陣でコンパクトな2ラインを敷くとスペースは殆どなくなり崩す事は困難になります。肝となるのは個人の守備力と決められたゾーン、選手同士の距離感を崩さないこと。結果的に今大会のゴールはセットプレイか素晴らしいミドルかカウンターでした。能動的な崩しのゴールってあったかなと思い付かないくらいに。

 

セミファイナルで敗れたベルギーがフランスを”アンチフットボール”と言って後々謝罪していましたが、まぁ言いたくなるのは分からなくもないです。能動的にプレーするチームが損をしたと感じてしまう程の戦い方は、これ以外の試合でも多く見られました。私はフランスをアンチフットボールとは思いませんし、堅守速攻がどれだけ効果的な戦術かは昔から分かっています。ただし、今大会通じて個人的に面白いなと思えるフットボールは殆どなかったです。それだけにファイナルで敗れたクロアチアですが、彼等が展開したフットボールは誇れるものだったと思いますし、モドリッチが大会MVPになったのはフットボールにとって良い事だったと思っています。

 

また個人のタレントにフォーカスすると、メッシとクリスティアーノという巨大なタレントは悲願のタイトルを掲げる事なく幕を降ろしました。クリスティアーノを活かしながらもそれでもチーム力の足りないポルトガルとそもそも混乱しかなかったメッシのアルゼンチン、共に優勝には遠いチームでした。個人的な輝きも流石と思えるモノはありましたが、散発的だったのは否めないですね。

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そして新時代の筆頭となるのは当初目されたネイマールアザールではなくフランスの怪童なのかもしれません。下記記事でも取り上げた通り、次代の足音は確実に聞こえました。

ムバッペはファイナルでダメ押しゴールを決めてますが、才能を凝縮したようなゴールでした。相手と1対1の状況でファーに蹴ると見せかけてニアにいく冷静且つ狡猾な判断、そして問題なく射抜くパワーと正確性を持ったスキル。あれが19歳ですからね。

その他のここまでフットボール界を支えてきた名手達(イニエスタなど)も軒並み去っていく今大会は、一つの時代の節目となるでしょう。日本代表に関しても次の4年間は大きなメンバー変更が訪れる可能性が高いですね。

 

情熱はあったがロマンはあったか!?

 

今大会改めて感じたのは代表戦というのはクラブのそれとはやはり趣きの違うモノだと感じましたね。4年に1度という周期に国の威信を背負っての世界大会は、情熱に溢れていました。ウルグアイのCBヒメネスがまだ試合中に泣いてしまったのは賛否を呼びましたが、それだけ精神的にも追い込まれる大会だという事ですね。アルゼンチンは今回も残念な結果となりましたが、ワールドカップに対する国民感情は来るとこまで来ちゃっている感があります。またアイスランドクロアチアの様に小国でも国を含めての一体感を出したチームも。それぞれのチームでこの大会に対する想いの掛け方が見えて、その点では非常に楽しめました。

 

只、残念ながらフットボール的には退屈でした。劇的な延長戦やPK戦はドラマチックではあったかもしれませんが、結局物議を醸したVARも含めてフットボールとしては退屈なシーンが多かったです。VARはまだまだ進歩の余地がありますから致し方なく、運用方法やそれに合わせた現行ルールの改正も状況に応じて、今後は必要になってくるかもしれませんね。

 

NumberWEBのオシム氏のインタビューを読み、氏の言う通り今後はより更にあらゆる事象がスピード化していくのでしょう。アスリートとしてのスピードは勿論、それに伴う状況判断を含めたプレーのスピードが上がっていくはずです。氏の言うティキタカが終わりを迎えたかは分かりません。今大会のスペインを指してそう言うのであればそうだと思いますが、そもそもティキタカとは何を指して言われたモノだったのか。ベースになったグアルディオラ時代のバルサには、テンポの良いショートパスは確かに大きな武器でした。でも今回のスペインはまるでテンポが良くないですし、あれを持ってしてボールゲームは死んだと思いません。

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今大会でも有用だったと感じたのはウィングです。今大会で上位に上がったチームには良質なウィング(サイドに打開力のある選手)を抱え、チームで武器として活用出来ています。優勝したフランスにはムバッペが、準優勝したクロアチアにもペリシッチがいましたね。ベルギーにもアザールといましたから。例えば早々に敗れたドイツにサネが居たらどうだったでしょうか、スペインにかつてのペドロのような存在がいれば、結果論ではありますがその有無が違いを分けた一つの要因だったのではと思います。躍進した日本にも乾がいましたね。

堅い守備に閉ざされた相手ゴールをこじ開けるにはカウンターにせよポゼッションにせよ、スピードあるアタッカーは最早欠かせないのではと感じました。

 

何れにせよ受動的なフットボールが結果を出した大会ではありましたが、それが世界のフットボールの潮流になって欲しくはないというのが本音です。リバプールのようなスピードある撃ち合いなら好むところではありますが、フランス代表のフットボールは好みではありません。世界のフットボールがスピードを上げていくのは間違いありませんが、創造の余地のないフットボールは楽しくない。個人的にはロマンをまるで感じないです。どれだけアスリートとしてのレベルが上がっていったとしても私はボールゲームを楽しみたいですし、意外なアイデアを愛でたい。各試合が進むにつれてそう切に想う大会だったかなと思います。

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まぁいつの時代になっても人はロマンを追うし、10番を求めてくれる筈。心配しなくても今大会だってモドリッチがいた訳だから、きっと4年後も”何処ぞの国のモドリッチ”がピッチにアートを描いてくれる事を楽しみに待ちましょう!!

 

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