クマごろうの独り言

三十路を越えたクマのオス。フットボール中心に気になること

何故成功するのか!?ペップ・グアルディオラのコンバート術

チャンピオンズリーグのラウンド8の対戦相手が同国対決となるリバプールに決まりましたね。今季1勝1敗のイーブンですし、リバプールとは噛み合わせが良過ぎるので、互いにゴールは多く入りそうです。となると、鍵になるのはアウェイゴールの差になりそうな予感です。

 

まぁ試合も空いてますので、今回の本題です。

 

数々のコンバートを成功させたペップ

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ペップ・グアルディオラ監督の特徴を表す際のポイントはいくつかありますが、今回はその中でコンバートについて考えてみます。コンバートとはポジションを移してプレーする事で、FWだった選手がDFをするとか、そういう意味ですね。 

ペップは今まで指揮したバルサバイエルンでも多くのコンバートをしていますし、それは現在のシティでも同様ですね。

 

主だったコンバート例

 

ハビエル・マスチェラーノ(DMF⇨ CB)

エリック・アビダル(SB ⇨CB)

リオネル・メッシ(WG⇨CF)

フィリップ・ラーム(SB ⇨DMF、CMF)

ダビド・アラバ(SB  ⇨CB、DMF、CMF)

アレクサンドル・コラロフ(SB ⇨CB)

ファビアン・デルフ(CMF⇨ SB)

 

これだけでもかなりの人数ですし、それ以外でも単発で結構ポジションをいじってますよね。中盤の選手をウィングやセンターフォワードで起用したり、ボランチの選手をセンターバックにするのはよくやる手ですね。今では他の監督でもするポピュラーな変化だと言えるものさえあります。

 

従来の彼等のポジションと思われていたところと変えていっても、多くの選手が機能しているのは驚くべき事です。選手元来のポリバレントさは勿論、ペップの目利きもよく言われるのですが、私は別のところにペップのコンバートが上手くいく要因があると思っています。

 

3つのキーポイント

 

上手くコンバートするのにどんな要因があるのか、以下3つの要素をあげます。

 

①選手に与えられたタスク

②メリットを出し、デメリットを隠す

上記2つを実行する為の能動的なフットボールスタイル

 

まずは①についてですが、そもそもコンバートされた選手たちに課せられているタスクは、従来のポジション像とは異なる事が殆どです。一般的なプレーで言えばCFは点を取るのが仕事であり、CBはボールを跳ね返し、SBはサイドを縦に上下動していきます。しかし、ペップのコンバートではこれらをあまり求めてはいません。

 

例えばマスチェラーノですが、彼はバルサ入団当初はリバプール時代と同じ様にボランチピボーテ)としてプレーするかと思われましたが、まぁブスケッツがいる事もありポジション確保に至りませんでした。ビルドアップにおいてバルサレベルではなかったのです。しかし、そんな彼でもポジションを1列落とし(つまりCBで)プレーすることで、従来のCBよりも展開力のある選手としてチームをより安定させる事に成功させたのです。またボールハントが持ち味でしたので、スペースのあるバルサでの守備は彼のプレー範囲の広さが役立ちました。

 

その他、アビダルコラロフのCBへのコンバートは、これまた最終ラインのビルドアップの向上を目指しての起用でした。特にコラロフなんかはペップらしいコンバートだと思います。左足のキック精度が売りのサイドバックは、チームに左利きの目ぼしいCBがいなかったこともあり、後方からのフィードで支えました。

 

今季特に話題になっているデルフの左SBへのコンバートですが、これもやはり従来のラテラル的なプレーを求めたのではなく、ラームやアラバといったバイエルン時代から活用するボランチへの移動ですね。結局やっているのは中盤としてのプレーなので、デルフが出来るのはある意味当然です。同じ使われ方でジンチェンコも起用されていますね。

 

という訳で彼等は確かにポジションを移しましたが、最初に述べたように一般的なプレーを求めていないという事ですね。典型的な”9番”としてメッシをCFで起用した訳ではないように。

  

とは言ってもそんなに上手くいくだろうかという事で②を意識する必要がある訳です。

当然、90分間こちらが意図しているプレーだけが巡ってくる訳ではありません。メリットは課せられたタスクによって、出せる準備は出来ている。しかし、例えばCBであれば相手のロングボールや相手FWとのタイトなマークをする必要があります。マスチェラーノは上背がありませんからセットプレイでは力になれない可能性がありますし、コラロフの守備はお察しでしたし、デルフも強力なウィンガーとの1対1を強いられると困難な状況になりますよね。

 

この様にメリットもあればデメリットもあるのは当たり前なので、如何にメリットを出しデメリットを消していくかがこのコンバートを成功させる秘訣でもある訳です。その為には個人ではなくチームで上手く機能させる必要があり、これはクライフの教えとも言えます。


そしてその為の工夫というかメリットが俄然出やすい状況を作っているのが③ですね。
ペップと言えば言わずと知れた攻撃的フットボールの信奉者。クライフより受け継がれるボールを主体として能動的に仕掛けていくスタイルですね。そして実際トップレベルの多くの試合でも70%前後、時間帯によっては80%以上のボール支配率を記録する事があります。よくボール支配率と勝敗の結果には関係ないと言う人もいますが、実際には大きく影響を及ぼすと思います。特にペップのようなチームでは。

 

70%保持しているという事は、試合通じて攻めている時間帯が7割、守備の時間帯が3割という事になります。また実際には攻守の切り替わりのタイミングで即時奪回のハイプレスを徹底する事で、構えて守備するシーンはもっと短いでしょう。となると①で述べた様に試合中に発生する主なタスクは攻撃に関するプレーなので、必然的に彼等が持ち味を発揮出来るようになっているのです。
 

コンバートであってコンバートではない、目指すのはトータルフットボールの進化

 

ここまでペップのコンバートについて考察していきましたが、結局のところコンバートだったんだろうか?って事ですね。ポジションを移したという点では確かにコンバートなのですが、やっている事は元々の選手の特徴をそのまま活かしているので、あまり変わっていないという。つまり実際にはコンバートであってコンバートじゃなかった。

 

ここで導き出せるのは、最早システムや従来のポジションとしての役割の境目も殆どないという事です。攻守は最早一体となりましたが、システムやポジションも概念が薄くなっていくでしょう。ペップはポジショニングとスペースの使い方のほうを意識していて、それは他の選手と含めて連動していく為、個々の従来のポジション的な役割はそれほど重要ではないのです。勿論、最低限のベースは必要となりますが。シティのフットボールを見ているとバルサ時代に比べて、選手のポジションチェンジが多い様にも感じます。バルサ時代は、メッシ、チャビ、イニエスタと稀代の天才が3人もいて、更に底でブスケッツが構える事で完璧なダイヤモンドが出来ていたのですが、シティで同じ事が出来るはずもなく、よりチームとして動いている印象が強いです。

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そして恐らくペップが最もやりたかったフットボールは今のシティの方ではないのかなと思います。目まぐるしくポジションチェンジしながらもチームのバランスが崩れない。チーム全体が意図的な動きと常に攻撃的なフットボール。まさにトータルフットボールですね。それはクライフやあるいはビエルサ、リージョのように。

今後もペップは周囲が驚くような起用をしてくるでしょう。しかしそれは只のコンバートではなく新たなスタイルであり、クライフより受け継いできたトータルフットボールの未来を見据えているのではないでしょうか。

 

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